Seminar

常識を疑え。「その前提」は正しいか? 地震学研究における研究姿勢と考え方

AI時代にこそ求められる、問いを立て直す力

AIがもっともらしい答えを出す時代に、大学で何を鍛えるのか。

地震学の知識も、最先端のデータ解析・開発スキルも、ここで学ぶことはできる。

しかし本当に身につけるべきなのは、問いを立て直す力と、しなやかでタフな思考。

答えを覚えるより、「問い」を育てる力

私たちが目指すのは、単なる知識の蓄積ではありません。AIが「もっともらしい答え」を瞬時に提示する時代だからこそ、重要になるのは「問いの質」です。既存の枠組みを疑い、自らの違和感から本質的な課題を発見するといった、社会のどのフィールドでも通用する「問いを立て直す力」「しなやかでタフな思考」を養うことこそが、私たちの教育のゴールです。

AI時代にこそ価値を持つ「問いを立てる力」
前提を疑う「違和感センサー」を磨く

AIは膨大な知識から「答え」を返してくれますが、その内容は問いの設定(前提)に左右されます。私たちは、「この前提は間違っていないか?」と違和感を持ち、新たな問いを再定義する訓練を重視しています。

対話を通じて「問い」を育てる

先輩や教員も、最初は「何が分からないか、すら分からない」状態からのスタートでした。分からないことを整理し、自分だけの問いに変えていくプロセスを、教員とのフラットな対話を通じて一緒に楽しんでいきましょう。

「予定調和」を裏切る結果こそ、面白がればいい

研究に行き詰まるのは当たり前。むしろ、そこが本当のスタートラインです。私たちには、行き詰まった時こそ学生と教員が膝を突き合わせ、一緒になって「謎解き」を楽しむ文化があります。このエキサイティングなプロセスは、ぜひ「地震学って面白い?」のページで追体験してください。

また、私たちは学年を問わず全員を「さん」付けで呼び合います。そこにあるのは「教員と学生」という上下関係ではなく、未踏の真理に挑む「対等な研究パートナー」という敬意です。

Episode

失敗こそが発見の鍵:研究室学生の初筆頭論文となった Suzuki & Yagi (2011, GRL) では、当初「深発地震の破壊伝播速度はスラブの温度で決まる」と仮定して研究を進めていました。

しかし、卒業研究発表会直前になって、この仮定が成り立たないことが判明したのです。絶望的な状況に見えましたが、学生と一緒に前提を見直し、軸を「温度」から「震源の深さ」に変えたところ、逆に「高速破壊が特定の深さで生じている」という新たな事実が浮かび上がってきました。

「どうして?」から始まる、発見への旅
好奇心で「どうして?」を楽しむ

このエピソードの学生も、最初からこの答えを持っていたわけではありません。むしろ、迷い、行き詰まり、教員と一緒に頭を抱えたからこそ、この発見にたどり着けました。必要なのは、目の前の結果を面白がれる、ちょっとした好奇心です。

想定外は、新しい枠組みを創るチャンス

想定外の結果が出たときは、経験が浅いほど、絶望的な気持ちになるものです。既存の枠組みから外れることを嫌う研究室がほとんどです。私たちは、ちょっと変わっているので、むしろ想定外を「常識が壊れる瞬間」と捉え、新しい枠組みを作ることを楽しみます。私たちにとって想定外は好物の一つです。

世界水準の研究成果と、その先のキャリア

流行をフォローする研究はしません。私たちが目指すのは、未踏の領域に「新たな点」を打つことです。教員と学生が一人の研究者として対等に向き合い、問いを立て直す。このフラットな議論の文化が、世界水準の論文発表と、官僚・IT・エネルギーなど多岐にわたる卒業生の活躍を支えています。

Research

20%はTOP10%論文。 独自の問いと少人数の議論で世界に刺す。

Students

学生筆頭国際論文24本。 学生が主役でアウトプットまで行く文化。

Career

進路は研究職だけじゃない。 IT/エネルギー/官僚など多様。

実績とキャリアの詳細を見る
世界が認める研究力

出版した論文の20%が、世界中で引用される「TOP10%論文」に選出されています。その多くは私たちが主導した研究であり、私たちが大切にしてきた「独自の問い」が、国際的に価値ある視点として認められている証です。あえて巨大プロジェクトに加わる道を選ばず、少人数での「顔の見える議論」を重視し、世界にインパクトを与えています。

学生が主役

指導学生の筆頭著者論文は24編。その多くが評価の高い国際誌(Q1雑誌等)に掲載されています。学生が自ら問いを立て、検証し、発表まで完遂する文化が根付いています。 受賞リスト

多彩なキャリア

卒業生は地震学関連分野だけでなく、IT企業、エネルギー業界、キャリア官僚など、多分野で「考える力」を活かして活躍しています。 就職先リスト

* これらの業績はあくまで結果であり、私たちは、この結果を出すことを目的化していません。私たちが研究についてどう考えているかを下の「Statement」にまとめています。

Statement
数値に縛られない「景色を変える」研究を

日本発のTOP10%論文が減っているとのデータから、日本の研究の質の低下が指摘されている。これは真実であろう。一方で、TOP10%論文を増やす対策として、国際共同研究や大型プロジェクトを推進するのは、よく理解できない。

「良い研究とは、論文発表前後で、世界の見え方を変える研究」ではないだろうか?

TOP10%論文は、良い研究の副産物に過ぎない。この副産物を増やそうという取り組みは、目的違いではないだろうか?
論文数を稼いだり、できるだけインパクトファクターが高い雑誌に出すためのベクトルと、「景色を変える研究」のベクトルは方向が全く違う。前者のベクトルで業績を数値的に測るというのは、後者のベクトルで研究をする研究者にとって、致命的であろう。

私たちが目指すのは、あくまで

「論文発表前後で、世界の見え方を変える研究」である。

八木 勇治

推薦書籍

「問いを立て直すための思考システム」をアップデートし続けることが重要です。私が影響を受け、学生にも「違和感」を持って読んでほしい書籍を紹介します。変わり者の地震学者が推薦するのは、もちろん地震学の本ではありません(笑)。
また、「こんな本が面白かった」というものがありましたら、ぜひ教えてください。

Systems

SYNC: なぜ自然はシンクロしたがるのか S.ストロガッツ 著

巨大地震の発生を、断層を単体ではなく、相互作用する複雑なネットワークとして捉える視点を与えてくれました。

Logic

偶然の科学 D.ワッツ 著

後付けの論理(後知恵バイアス)の危うさを知り、データや結果を解釈する際に、短絡的な思考に陥らないための戒めとしています。

Extremes

ブラックスワン N.N.タレブ 著

3.11のような巨大地震こそが世界を決定づける。統計的な「例外」でも決定的な「事象」を直視する重要性を痛感します。

Paradigms

科学革命の構造 T.クーン 著

なぜスジが悪い古いモデルやコンセプトは生き延びるのか。パラダイム・シフトを起こす「新しい点」を作るモチベーションになった本です。

Social Risk

リスクにあなたは騙される D.ガードナー 著

人がなぜ実態のないリスクに怯え、真のリスクを見逃すのか。地震学の研究を「安心」へ繋げるための参考にしています。

Mindset

ファスト&スロー D.カーネマン 著

直感的な「ファスト思考」に頼らず、違和感を放置せずに「スロー思考」で論理を組み立てる。研究者に最も必要な「脳の使い方のマナー」を教えてくれます。AI時代にこそ、この「スロー思考」が価値を持つと考えています。

Message

学生の皆さんへ

まだ「問い」が漠然としていても大丈夫です。

必要なのは、明確な問いや高い専門知識ではありません。分からないことに向き合い、考えることから逃げないという意欲です。

興味を持った段階での相談や、研究室見学をいつでも歓迎しています。 雑談レベルの相談でも全く構いません。気楽に、Teamsやメールでご連絡ください。

具体的な研究生活や進路についてはFAQにまとめています。

* 筑波大生で地震学に興味があるのであれば、奥脇研もおすすめです。気楽に奥脇さんにTeamsやメールで連絡してもOKとのことです。