答えを覚えるより、「問い」を育てる力
八木研は地震学の研究室ですが、教育のゴールは単なる知識の習得ではありません。 社会に出てからも武器になる「状況に応じて考え直せる柔軟な思考力」の獲得です。
AI時代に必要な違和感センサー
AIは膨大な知識を持ち、良いプロンプトを書けば、「答え」を返してくれます。しかし、どんな答えが出てくるかは、どんな問いを設定したのかでほぼ決まります。そのため、八木研では、「前提が間違えていないか?」「条件を変えたら全く違う答えが出るのではないか?」と違和感を持ち、新たな「問い」をつくる訓練を行っています。
初めからできるわけない
「問いをつくる」なんて、自分にはハードルが高いと感じるかもしれません。でも安心してください。先輩たちも、最初は「何が分からないか、すら分からない」という状態からのスタートでした。八木研は、その「分からない」を整理し、自分だけの問いに変えていくプロセスを教員と一緒に楽しむ場所です。
「失敗」は、研究が前に進む合図
研究に行き詰まるのは当たり前。八木研では、行き詰まった時こそが本当のスタートラインだと考えています。
失敗こそが発見の鍵:八木研学生の初論文となった Suzuki & Yagi (2011, GRL) では、当初「深発地震の破壊伝播速度はスラブの温度で決まる」と仮定して研究を進めていました。
しかし、卒業研究発表会直前になって、この仮定が成り立たないことが判明したのです。絶望的な状況に見えましたが、学生と一緒に前提を見直し、軸を「温度」から「震源の深さ」に変えたところ、逆に「高速破壊が特定の深さで生じている」という新たな事実が浮かび上がってきました。
必要なのは好奇心
このエピソードの学生も、最初からこの答えを持っていたわけではありません。むしろ、迷い、行き詰まり、教員と一緒に頭を抱えたからこそ、この発見にたどり着けました。必要なのは、目の前の結果を面白がれる、ちょっとした好奇心です。
想定外の結果はチャンス
想定外の結果が出たときは、経験が浅いほど、絶望的な気持ちになるものです。既存の枠組みから外れることを嫌う研究室がほとんどです。私たちは、ちょっと変わっているので、むしろ想定外を「常識が壊れる瞬間」と捉え、新しい枠組みを作ることを楽しみます。むしろ、想定外は好物の一つです。
研究室選びの際、あなたの「違和感センサー」の感度を高めておけば、教員や学生との会話から、その研究室が枠組みに固執しているのか、そうでないのか、その違いがはっきりと見えてくるはずです。
「違和感」が出発点。多様なテーマと充実した環境
プロジェクトありきではなく、学生自身の関心や「なぜ?」という問いからテーマを決定します。
- 巨大地震サイクルの再検討: 「周期説」は本当に正しいのか?を問い直す。
- 超せん断破壊の発生率: 超高速破壊は稀なのか、ありふれているのか?
- データ解析手法の開発: 今まで見逃していた奇妙な現象を新手法で見つける。
研究を支える環境
ハードウェア: 学生一人ひとりにiMac等の専用端末、自由に使える大規模計算サーバーを完備。
ナレッジ共有: 解析ノウハウやプログラムはGitHubで管理。歴代の卒業生の知見にいつでもアクセス可能
オープンな議論: 研究室には議論用のホワイトボードや大型ディスプレイを設置。先輩・後輩の垣根なく、日常的に相談できる文化。
フラットな関係: 全員が「さん」付けで呼び合う文化。「教授と学生」ではなく「研究を共にするパートナー」。
世界水準の研究成果と、その先のキャリア
最先端研究をフォローするのではなく「新たな点を作る」という研究スタンスと、「問いを立て直し、丁寧に検証する」というプロセスは、結果として高い成果に結びついています。
20%はTOP10%論文。 独自の問いと少人数の議論で世界に刺す。
学生筆頭論文24本。 学生が主役でアウトプットまで行く文化。
進路は研究職だけじゃない。 IT/エネルギー/官僚など多様。
世界が認める研究力
出版した論文の20%が、世界中で引用される「TOP10%論文」に選出されています。その多くは八木研が主導した研究です。これは、私たちが大切にしてきた「独自の問い」が、国際的に価値ある視点として認められている結果です。
これらの高被引用論文の多くが少人数のチームで達成されています。私たちはあえて「個の思考」と「顔の見える議論」を重視してきました。巨大なプロジェクトに埋もれるのではなく、少人数で世界にインパクトを与える。 八木研が、いかにユニークな(あるいは、絶滅危惧種的な?)研究室であるかが分かると思います。
学生が主役
指導学生の筆頭著者論文は24編。その多くが評価の高い国際誌(Q1雑誌等)に掲載されています。また、学生は多くの賞を受賞しています。受賞リスト
多様なキャリア
卒業生は地震学の研究職だけでなく、IT企業、エネルギー業界、キャリア官僚など、多分野で「考える力」を活かして活躍しています。就職先リスト
数値に縛られない「景色を変える」研究を
良い研究とは?
日本発のTOP10%論文が減っているとのデータから、日本の研究の質の低下が指摘されている。これは真実であろう。一方で、TOP10%論文を増やす対策として、国際共同研究や大型プロジェクトを推進するのは、よく理解できない。
「良い研究とは、論文発表前後で、世界の見え方を変える研究」ではないだろうか?
TOP10%論文は、良い研究の副産物に過ぎない。この副産物を増やそうという取り組みは、目的違いではないだろうか?
論文数を稼いだり、できるだけインパクトファクターが高い雑誌に出すためのベクトルと、「景色を変える研究」のベクトルは方向が全く違う。前者のベクトルで業績を数値的に測るというのは、後者のベクトルで研究をする研究者にとって、例外はあるだろうが、致命的であろう。
また、ベクトルの方向が違うのだから、二つのベクトルの研究を同時にやれというのも無理がないだろうか?
私たちが目指すのは、あくまで
「論文発表前後で、世界の見え方を変える研究」である。
八木 勇治
学生の皆さんへ
まだ「問い」が漠然としていても大丈夫です。
必要なのは、明確な問いや高い専門知識ではありません。分からないことに向き合い、考えることから逃げないという意欲です。
興味を持った段階での相談や、研究室見学をいつでも歓迎しています。 雑談レベルの相談でも全く構いません。気楽に、Teamsやメールでご連絡ください。