国際的かつ学際的な人材育成の取り組み

中国地質大学とのダブル・デイグリープログラム(DDP)

地球進化科学専攻と中国地質大学(北京校)地球科学・地球資源科学研究科の間で、ダブル・デイグリープログラム(DDP)制度が締結されました。この制度は地球科学的に条件の異なる国土にある二つの大学が、地球科学に関する諸問題が生じた際にそれらに対応するため、お互い共通の認識の下教育・研究を行うことを基本概念にしております。この制度では地球進化科学専攻の後期博士課程の学生が最低一年間中国地質大学に留学し、現地の指導教員のもと研究を行い、開講されている授業の必要単位を修得します。その後博士論文をまとめ両大学の必要要件を満たせば筑波大学と中国地質大学から学位を修得できる制度です。筑波大学からの学生は中国地質大学において、英語で研究指導,授業を受けます。また英語による質疑応答を行うことにより、実践的・確実な英語能力の向上に繋がります。この制度により国際的な感覚が養われ、社会が要請する国際的に活躍できる人材の育成にも貢献します。

 



海外の大学と共同で行う国際巡検

中国地質大学と行う国際巡検の他に、筑波大学地球学類の地球進化学主専攻分野とタイ国のチュラロンコーン大学との合同野外巡検がカリキュラムの一環として行われています。筑波大とチュラ大の学部学生2・3年生を中心に,隔年で互いの国を訪問し、その国の地質・岩石を見学する野外実習です。約一週間の共同生活で、現場での引率教員による説明や互いのコミュニケーションは基本的に英語で行います。プレート境界に位置する日本と、アジア大陸の一部をなすタイ国の地質はそれぞれの特徴を持ち、大きく異なります。互いに異なる岩石・化石などを実際に目で見て観察することは、地質学的な知見を広げる最高のチャンスです。また海外学生との共同生活を通して、英語コミュニケーション能力に磨きをかける絶好の機会であることも間違いありません。


他の研究科、学位プログラムとの連携

地球進化科学の教員は、筑波大学大学院の教育研究科の教育にも携わっています。また、地球科学専攻の学生でも、大学院終了時に専修免許状を取得して、地学や理科等の教員になる学生もいます。また、分野横断的な教育プログラムである、山岳学位プログラムにも参画しています。


考古学との連携

地球進化科学分野では人文社会系の教員と協同して、平成28-30年度プレ戦略イニシアティブ「西アジア文明研究センターの確立」(代表:山田重郎教授)を立ち上げました。出アフリカを果たした人類が世界中に拡散していく過程で、農耕文明や都市文明を発達させる舞台となった西アジアに注目し、地球科学的研究を展開しています。環境変動による自然環境の緩やかな変遷や、地震・噴火・洪水など急激に生じる自然災害と、農耕・都市文明との関わりあいを、発掘調査や堆積物の調査を通して理解していきます。また、西アジア各地で月ごとに降水や河川水を採取し、現在の環境動態の解明に努めています。石器や土器・粘土板、威信材などの遺物に注目し、各地の地質と照らし合わせながら、それらの原産地推定に貢献します。また、物質科学的な観点から、土器などのパイロテクノロジーの発達過程を考究します。

関連するサイト:西アジア文明研究センター


IODPとの連携

 地球進化科学専攻は、日本・米国・欧州主導のもと世界26ヶ国が参画する多国間国際共同プロジェクトIODP(International Ocean Discovery Program)に積極的に関与・参加しています。IODPには大きく分けて4つのミッション、すなわち「地震の謎を解く」、「生命の謎を探る」、「マントルを掘る」、「地球環境変遷を探る」があります。本専攻からはこれまで、地球深部探査船「ちきゅう」による東北地方太平洋沖地震震源域掘削や南海トラフ地震発生帯掘削に乗船参加し、巨大地震・津波の発生過程解明に重要な貢献をしてきました。最近では、海底資源探査調査にも参加しています。今後もIODPとの連携を密にし、積極的に参加していくことで、地球科学の謎解きにチャレンジし、国際性豊かな人材を育てていきたいと考えています。






地域貢献 ー研究成果を社会へ還元ー


地域資源の素材開拓: 筑波山地域ジオパーク

ジオパークは大地の公園ともいうべき日本ジオパークネットワーク(JGN)が認定する新しい公園の仕組みです。ジオパークには日本ジオパークと世界ジオパークがありますが、世界ジオパークはユネスコの主要プロジェクトのひとつです。世界ジオパークになるためには日本ジオパークになることが必要条件です。地球進化科学領域は様々な形で日本ジオパーク活動に協力しています。とくに筑波山地域ジオパーク(2016年9月認定)については、その推進協議会(会長はつくば市長)の副会長が筑波大学副学長であることから、積極的に関わっています。地球学類学生によるジオネットアースの活動もそのひとつで、学園祭では「つくばの自然」の展示を行ったり、地元小学生などと一緒に筑波山登山を行ったりして自然の楽しみ方や親 しみ方を教えています。この他に教員も、公開講座・自然寄付講座・教員免許状更新講習を通じて、市民の皆さんに筑波山地域ジオパークの魅力や見所などに関した情報を提供しています。



博物館との関係と学芸員認定資格

地球進化科学は自然史科学の中核をなす分野で、世界各地の自然(史)系博物館では化石、岩石、鉱物を含め地球進化科学の研究対象がそのまま展示の対象になっています。特に恐竜や大型の哺乳動物化石の標本は博物館入口付近に鎮座し、来館者を自然史の入口扉に導き、またその博物館を特徴づける重要な存在意義を持ちます。地球進化科学専攻の大学院修了者は現在日本各地の国公立自然系博物館の学芸員として活躍しています。一般に博物館の学芸員になるためには、大学で博物館学芸員に係る必要単位を修得する必要があります。本専攻では博物館学の授業の一部を担当するとともに、自然系博物館実習に係る博物館と学生との橋渡しを行っている教員もいます。筑波大学はパートナーシップ制度を結んでいる国立科学博物館や、茨城県立自然博物館とは一定数の博物館実習履修者を優先的に受け入れてもらえる制度が構築されています。また産業技術総合研究所地質標本館やエキスポセンターでも定められた日数・学生数で博物館実習が可能です。地球進化科学専攻には化石、岩石、鉱物、地層に関する大量の登録標本があり、これらを教育・研究に有効に生かすために、近い将来の大学博物館設立に向け,努力をしております。


ジオキッズゼミナール

地球学類では年に3~4回程度小学生向けイベント「ジオキッズ・セミナール」を開催しています。体験を通じて子供たちに「地球」に興味を持ってもらうことを目的としています。ジオキッズゼミナールはつくば市との協賛により、つくば駅前BiViつくば内つくば総合インフォメーションセンターにて開催しています。