2010年1月12日(UT)ハイチで発生した大地震(暫定)

1月12日(UT)にハイチでMw 7クラスの逆断層成分を含む横ずれ断層を動かす地震が発生しました。カリブ海プレートと北米プレートのプレート境界に存在する横ずれ断層帯で発生したプレート内地震です。規模、断層のメカニズムは阪神大震災を引き起こした兵庫県南部地震と似ています。
(追記: 兵庫県南部地震の地震モーメントは約 2 x 10^19 Nm なので、約2倍程度の規模となっていますが、M7クラスの地震という意味で同規模と書いています。破壊継続時間と断層の大きさ[40 km x 20 km]は兵庫県南部地震とほぼ一致しますが、地震モーメントは2倍なので、断層のずれの量は2倍となります。単純に考えれば、兵庫県南部地震の地震動より強い地震動が観測されることになります。)
ここでは,FDSNとGSNの地震波形記録をIRIS-DMCからダウンロードして,地震時の断層面上の滑り分布を求めました。ここで得られた解は、グリーン関数の不完全性を考慮した震源解析手法で得られたものです。サンプリング間隔 0.2 秒で計算しています。破壊は深さ13kmから始まり、震源から地表かつポルトープランスに向かって伝わっており、5秒後には地表に達しています。地表付近で断層が大きくずれたこと、破壊の指方性によって地震動が強くなったこと、断層の上盤側にあったこと等が要因でポルトープランスで被害が拡大したと考えられます。大都市に向けて地震破壊が伝わり、被害が大きくなった点も兵庫県南部地震と類似しています。
追記(2010/01/29): InSARの結果とUSGSの震源からは、破壊が西側に進行したように見えます。つまり、波形解析から得られたものと異なります。横ずれ断層型の地震では、走向や傾斜のわずかな変化で遠地実体波のグリーン関数が大きく変化します。グリーン関数が大きく変化するといった状況を想定した定式化になっていないことが原因で、今回の私の解析が上手く機能しなかった可能性があります。 (筑波大学 八木勇治

主な解析結果

断層モデル
地震モーメント Mo = 4.8 x 10^19 Nm (Mw 7.06);
破壊継続時間 T = 約 14 sec ;
(strike, dip, rake) = (263, 68, 35.5)
震源の深さ = 13 km. (震央はUSGSが決定した値を使用しました。)

すべり量分布.星印は震央

震源メカニズム解,震源時間関数,すべり量分布

観測波形(黒線)と理論波形(赤線)の比較