地震豆知識

様々なマグニチュード

地震の大きさをはかる物差しをマグニチュードといいます。マグニチュードをはかる方法は主に二つあります。 震源から発生した地震波の強さではかる方法と、断層運動の大きさではかる方法です。

一部の例外を除いて、地震波 の大きさ(振幅)は、波源(震源域)から離れれば離れるほど、小さくなります。また、波源が大きいほど、大きな 波になります。地震から観測点がどのくらい離れているかをはかり、波が小さくなった効果を補正することによって、 震源から発生した地震波の強さをはかる事ができます。このようにして、日本では良く使用される気象庁マグニチュード(MJMA)が求まります。ここで、地震波は、大きな地震ほど、ゆったりとした長周期の波を多く含みます。このため限られた短い周期の波だけでマグニチュードを決めると、断層運動の大きさの割にはマグニチュードが大きくならないということが起こります(マグニチュードの頭打ち)。

断層運動の大きさを表す量として、地震モーメント(M0)があります。M0 は、剛性率、断層の総面積、断層のずれの平均を掛け合わせた値です。M0 の値から、モーメントマグニチュード(Mw)を求めることができます。M0 は、十分に長い周期の波の強さから求める事ができ、マグニチュードの頭打ちは起こりません。しかし、Mw は、地震被害に直結する波がどのくらい発生したかを示す物差しではありません。

はかる物差しによって、マグニチュードの値は異なります。Mw は、物理的な意味が明確であるため、地震の大きさを表現する最良の方法のように見えます。しかし、Mw は地震波の強さとは無関係であり、地震被害の程度を判断するには、MJMA の方が適しています。それぞれのマグニチュードの特性を理解して、地震防災に役立てる努力が必要です。詳しくは,日本地震学会広報誌「なゐふる」55号で (2006/06/05 八木勇治)

震源域と余震域

一般に,震源域とは断層すべり破壊が生じた領域の事を指します(宇津,地震学,3版,p2).近年の研究により,プレート境界型地震では,余震は地震時に断層すべりが生じた領域(震源域)ではなく,その周辺で発生している事が明らかになりつつあります.この余震が発生する領域は,本震時の断層すべりにより歪みが負荷された領域に位置します.例えば,2003年十勝沖地震でも観測されています(Yagi, EPS, 2004a).また,1996年10月と12月に日向灘で起こった地震は,2つの地震の余震域はほとんど一致するが,震源域は全く重ならない事が指摘されています(Yagi et al., GRL, 1999).これらの事を考慮すると,余震領域をそのまま震源域と考えるのは危険と言わざるおえません.一方で,プレート内地震では,プレート境界型地震のように余震域と断層すべり分布との相補関係を明瞭に確認できるケースは少ないです.(2005/08/19 八木勇治)

スマトラ沖巨大地震

2004年スマトラ沖巨大地震の地震波形を見たとき,今まで私が解析してきた波形のどのタイプにも当てはまらなく,驚いた. 非常に解析しにくい波形であった.そのため,現在でも地震の大きさを表すマグニチュードがどの程度であったか議論されて いる.この地震波形を見て,観測史上史上最大と言われているチリ地震のマグニチュードはどの程度信用できるのか, 不安を抱いてしまう.最新の知見を入れて,解析する時の仮定を見直し,検討し直す必要があると感じた.(2005/05/22 八木勇治)