2010年2月27日にチリ沖で発生した巨大地震の震源過程(改訂 2010/03/01)

2010年2月27日にチリでM8.9の巨大地震が発生しました。断層のメカニズムと深さから、沈み込むナスカプレートと南アメリカプレートのプレート境界で発生した地震(いわゆる海溝型地震)であると推定されます。ここでは、 IRIS-DMCからFDSNとGSNの地震観測網の波形データをダウンロードして、震源過程を求めました。グリーン関数の誤差成分を考慮した波形インバージョン法を用いてABIC最小解を求めています。まだ断層面・破壊伝搬速度・震源の深さ・速度構造モデル等の検討をしっかりと行っていないために、今後若干解が変化する可能性があります。暫定解であることを留意して解析結果を見てください。

結果

地震モーメント Mo = 2.9 x 10**22 Nm (Mw 8.9);
破壊継続時間 T = 140 s;
(strike, dip, rake) = (20, 12, 99)
震源: (Lat = 35.846S, Lon = 72.719W , depth= 35 km).
[ここで,震央はUSGSの値を使用し、震源の深さは波形の比較から求めました。]

大まかな特徴は、前回得られた解析結果と調和的と言えます。ただ、最大すべり量は13 m、マグニチュードがMw 8.9と前回の値より大きな値が得られています。また、破壊継続時間は100 sから140 sと長めに求まりました。以前の解析では変位波形を使用したため(今回は速度波形)に、長周期成分の誤差が大きくなってしまったことが原因と考えられます。

追記 (2010/03/01 12:40) :今回の地震周辺では、1906 (M 8.4)、1928 (M8.0)、1985 (M8.0)の地震が発生しています。1960年と1985年の地震の間の空白域で今回の地震が発生したことがわかります。

 今回の地震のアニメーションファイル

(文責 八木勇治、西村直樹:筑波大学)

すべり量分布.星印は震央(最新版)

震源メカニズム解,震源時間関数,すべり量分布

観測波形(黒線)と理論波形(赤線)の比較