変成岩分野の研究テーマ
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→詳細な研究内容は、「筑波大学変成岩研究グループ」ホームページを御覧下さい.

1.太古代グラニュライトの成因と地殻進化

 太古代末期の25-27億年前に,世界各地で高度変成岩(グラニュライト)が形成されました.我々はその代表例である,南部アフリカ・リンポポ帯(Limpopo Belt)および東南極・ナピア岩体(Napier Complex)の調査を行い,その成因について検討しています.太古代の地温勾配は,現在よりもはるかに高温だったと考えられており,グラニュライトの存在は地球の冷却史を議論する上でも重要です.
 この2つのグラニュライト帯は,ほぼ同じ時代に形成されたにもかかわらず,全く異なる変成履歴を示します.つまり,リンポポ帯は時計回り(ITD),ナピア岩体は反時計回り(IBC)の温度・圧力経路が推定されています.今後,さらに詳細な温度・圧力構造,流体組成,鉱物化学組成の決定により,両者の比較を行っていきます.今後はインド,南米地域の太古代グラニュライトについて研究地域を広げていく予定です.

 
左:南極リュツオホルム岩体スカーレンの露岩地域.右:南極ナピア岩体トナー島のサフィリングラニュライト.

2.接触変成帯の熱構造と変成鉱物の相解析

 接触変成帯は地殻の比較的浅所にマグマが貫入することによって,マグマ周囲の岩石にマグマから熱が供給されて生じる接触変成作用によってできた変成帯です.接触変成作用は熱変成作用とも呼ばれ,比較的限定された地域に生じる局所変成作用の代表的なものです.私たちの研究室では,世界最大の火成岩体である南アフリカ共和国のブッシュフェルト複合岩体(Bushveld Complex)中の捕獲岩(ゼノリス)や岩体周囲の接触変成帯,茨城県南部の筑波山周辺のホルンフェルス,花崗岩質岩体やその捕獲岩について調査しています.
 接触変成作用では熱の伝導・対流・放射とともに物質の移動や鉱物の生成・消滅なども起きています.また,岩石が高温にさらされることによって再溶融が起こり,ミグマタイト(migmatite)が生じることもあります.我々は詳細な温度・圧力条件の推定とともに鉱物の化学組成や流体組成を明らかにし,鉱物の熱力学データに基づいた相解析を行って鉱物の安定条件を決定して,接触変成帯内(あるいは捕獲岩とマグマとの間)で起きている熱や物質の移動などの現象,migmatiteの生成条件などについて解明していきます.また,これらの現象についてコンピュータを用いてのシミュレーションも行っていく予定です.

3.変成作用に関与した流体の研究

 変成作用において,岩石中に存在する流体相の種類や量(アクティビティー)が,変成鉱物の安定領域や変成反応の進行に大きな影響を与えていることが分かっています.流体相のアクティビティーは,既存の熱力学的データを用いて計算を行うことが可能であり,現在までに,Holland and PowellやBermanなどの熱力学的データベースが公表されています.しかし,これらはデータの互換性等の問題があります.本研究室では熱力学計算プログラム「BEST3」,「STEP1」を独自に開発し,鉱物組成をもとに変成作用における流体の影響について検討しています.
 同時に,変成鉱物中に含まれる流体包有物を用いて,流体の種類をダイレクトに決定する方法も行っています.外国では多くの研究者が高度変成岩中の流体包有物を研究していますが,日本での研究例は未だ乏しいのが現状です.本研究室では,USGS製のheating/freezingステージを用いて,流体包有物に含まれる流体の組成・密度決定を行い,詳細な記載データをもとにその成因について研究しています.

4.地質温度計の開発と応用

既存の実験データや天然の変成岩中の鉱物組成データをもとに,新たな地質温度計を開発し,その応用の可能性を検討しています.

→最近の修士, 博士論文テーマ(変成岩分野)


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